こども選挙 運営方針

主権者教育としてのこども選挙を、公正・中立・安全に実施するために

こども選挙は、本物の選挙と同じ時期に、こどもたちが地域のことを学び、考え、意見を表明し、模擬的に投票を体験する主権者教育の取り組みです。

私たちは、こども選挙を、特定の候補者・政党・政治団体を応援する活動として行うものではありません。また、実際の選挙結果に影響を与えることを目的とするものでもありません。

目的はあくまで、こどもたちが民主主義や選挙、地域社会への参加について学び、自分の暮らすまちの未来を自分ごととして考える機会をつくることにあります。

こども選挙は、こどもたちが地域社会の一員として考え、意見を持ち、社会に参加するための教育的機会として実施します。

本運営方針について

本運営方針は、こども選挙の運営者が独自の判断だけで作成したものではありません。

こども選挙は、まず、こども基本法の「こどもが自己に直接関係する事項について意見を表明する機会や、多様な社会的活動に参画する機会が確保されること」という理念に沿って実施します。

そのうえで、総務省・文部科学省による主権者教育副教材『私たちが拓く日本の未来 有権者として求められる力を身に付けるために』を基礎資料の一つとし、その内容を踏まえて運営します。同副教材では、選挙制度の理解、政治や選挙への関心の醸成、模擬選挙・模擬議会等の参加実践型学習、選挙に際しての留意事項などが示されています。

また、実際の選挙と同時期に行う取り組みであることを踏まえ、公職選挙法を遵守し、未成年者による選挙運動の禁止、人気投票の事前公表の禁止、候補者間の公平性、政治的中立性などに十分配慮して運営します。

本方針は、こども基本法の理念、国が示す主権者教育の考え方、および公職選挙法上の規律を踏まえ、こども選挙を教育的・公正・中立・安全に実施するための具体的な運用基準を明文化したものです。

1. こども選挙の目的は主権者教育

こども選挙の目的は、主権者教育です。具体的には以下の3つです。

  • 第一に、こどもたちが民主主義や選挙の仕組みを、知識としてだけでなく体験を通じて学ぶことです。
  • 第二に、こどもたちが自分の住むまちの課題や未来について考え、自分の意見を持つ機会を得ることです。
  • 第三に、こどもたちの声を地域社会に届け、こどもも社会の一員であるという実感を育むことです。

したがって、こども選挙において重視するのは、こどもたちが学び、調べ、話し合い、考え、意見を表明するプロセスを最も大切にします。

2. 公職選挙法の遵守について

こども選挙は、実際の選挙と同時期に行う取り組みであるため、公職選挙法を遵守し、実際の選挙の公正を損なわないよう、慎重に運営します。

公職選挙法は、選挙が公正かつ適正に行われるため、選挙運動や選挙に関する行為について各種の規制を定めています。こども選挙では、特に以下の点について注意し、運営上のルールを定めます。

3. こどもの選挙運動にあたらないための方針

公職選挙法上、未成年者による選挙運動は禁止されています。ここでいう選挙運動とは、選挙期間中に特定の候補者を当選させる、または当選させない目的で行われる活動を指します。

こども選挙では、こどもたちが特定の候補者を応援したり、他者に特定の候補者への投票を呼びかけたりする活動は行いません。

具体的には、以下を徹底します。

  • こども選挙委員や参加するこどもに対して、特定の候補者への投票を呼びかけないこと、特定の候補者を応援・批判する発信をしないことを事前に説明します。
  • 投票所では、こどもたちに「誰に投票したかを人に言わない」「友だちや家族に特定の候補者への投票をすすめない」ことを説明します。
  • ワークショップや学習プログラムでは、特定の候補者に偏りのある解説を行ったり、評価を示したりすることは行いません。
  • こども選挙の広報物、ウェブサイト、SNS等においても、特定の候補者の当選を目的とする表現や、投票依頼にあたる表現は用いません。

こどもたちの活動は、あくまで「学ぶ」「考える」「質問する」「意見を表明する」「模擬投票を体験する」ものであり、実際の選挙における選挙運動ではありません。

4. 人気投票の事前公表にあたらないための方針

公職選挙法では、選挙に関して、公職に就くべき者を予想する人気投票の経過または結果の公表が禁止されています。こども選挙では、この点を踏まえ、実際の選挙が終了するまで、こども選挙の投票経過や投票結果を一切公表しません。

具体的には、以下を徹底します。

  • 投票期間中および実際の選挙の投票終了前には、こども選挙の候補者別の得票数、順位、傾向、途中経過、投票先が推測される情報を公表しません。
  • SNS、メディア対応、関係者への共有においても、実際の選挙終了前にこども選挙の結果や傾向を示す情報を出しません。
  • こども選挙の結果の公表は、実際の選挙終了後に、記録として公表します。その際も、実際の選挙結果への影響を目的とするものではなく、こどもたちの学びと社会参加の成果として位置づけます。

5. 候補者インタビューの公平性

こども選挙では、候補者に対するインタビューを行う場合があります。これは、こどもたちが候補者の考えを知り、まちの未来について考えるための学習機会です。

候補者インタビューは、特定の候補者を有利または不利にすることがないよう、同一条件で実施します。

具体的には、以下の方針で行います。

  • すべての候補者に対して、同じ方法でインタビューの趣旨を説明し、同じ機会を提供します。
  • 質問内容は、こどもたちが考えた質問をもとに、すべての候補者に同一の質問を行います。
  • 質問は事前に同じ形式で共有し、回答時間、撮影条件、撮影機材、撮り直しの可否、編集方針などを可能な限り統一します。
  • 動画や回答を掲載する場合は、実際の選挙における届出順など、恣意性のない順序で掲載します。
  • 運営者による候補者回答への評価、解説、推奨は行いません。
  • 候補者インタビューの実施にあたっては、事前に趣旨、使用範囲、掲載方法、編集方針等について候補者本人の同意を得たうえで実施します。

6. 政治的中立性の担保

こども選挙は、政治的中立性を重視して運営します。

ここでいう政治的中立性とは、こどもたちに特定の政治的立場、候補者、政党、政策判断を押し付けないことを意味します。こどもたちが自分で学び、自分で考え、自分の意見を形成することを支援します。

具体的には、以下を徹底します。

  • ワークショップや講義では、民主主義、選挙、地域社会、行政の仕組みなどを客観的に扱います。
  • 講師、ファシリテーター、運営スタッフは、自身の政治的意見や支持候補をこどもたちに示したり、誘導したりしません。
  • 候補者に関する情報は、原則として候補者本人からの回答や公的に確認できる情報に限定し、運営者による評価や解説は行いません。
  • こどもから候補者に関する質問が出た場合でも、運営者が候補者の優劣を説明することはせず、「自分で調べて考える」姿勢を促します。
  • 広報物やウェブサイトでは、特定の候補者や政党を支持・不支持する表現を用いません。
  • 運営スタッフ、ボランティア、関係者に対しても、活動中の政治的中立性に関するルールを共有します。

こども選挙は、政治を遠ざけるものではありません。むしろ、政治や選挙をこどもたちが安心して学べる公共的なテーマとして扱うものです。そのために、特定の立場への誘導を避け、教育的・公正・中立・安全で主体的な学びの場を設計します。

7. こどもマニフェストについて

こども選挙では、こどもたちが地域の課題を学び、話し合い、自分たちの視点から「まちがこうなったらいい」という提案をまとめる取り組みとして、「こどもマニフェスト」を作成することがあります。

こどもマニフェストは、候補者や政党の公約ではありません。また、特定の候補者に投票すること、または投票しないことを呼びかけるものでもありません。

こどもマニフェストは、こどもたちが地域の課題に触れ、自分たちの暮らしや未来に関わるテーマについて考え、意見を言語化するための主権者教育プログラムです。

一般に、市民の側から候補者や政治家に対して政策提言を行う取り組みは、市民マニフェスト、住民マニフェスト、逆マニフェストなどと呼ばれることがあります。これは、市民が地域の課題を自分ごととして捉え、政策形成に参加するための方法です。

こども選挙におけるこどもマニフェストは、以下の性質を持つものとして扱います。

  • こどもたちの意見表明の成果物であること。
  • 地域課題を学び、考えるプロセスの記録であること。
  • 特定の候補者の支持・不支持を示すものではないこと。
  • 候補者に対して賛否を迫ったり、投票判断を誘導したりするものではないこと。
  • 選挙後も、こどもたちの声を地域社会に届けるための公共的な提案であること。

こども基本法では、こどもの意見表明機会の確保や、社会参画の機会の確保が基本理念とされています。こどもマニフェストは、この理念に沿って、こどもたちの声を可視化し、地域社会に届ける取り組みです。

8. こども選挙コンテンツの二次利用禁止

こども選挙で作成・公開するコンテンツは、主権者教育を目的とした学習・啓発のためのものです。
候補者、政党、政治団体、支援者その他の第三者が、これらのコンテンツを選挙運動、政治活動、特定候補者の支持・不支持を目的として利用することをお断りします。

対象となるコンテンツには、以下を含みます。

こども選挙の名称、ロゴ、ビジュアル、写真、動画、ウェブページ、SNS投稿、候補者インタビュー動画、こどもマニフェスト、こどもたちの質問、こどもたちの意見・メッセージ、投票結果、アンケート結果、その他こども選挙に関連して作成・公開された一切の資料。

特に、以下のような利用はお断りします。

  • 候補者本人、陣営、政党、政治団体、支援者等が、こども選挙やこどもマニフェストの内容を引用・転載・切り抜き・加工・共有し、自らへの支持を広げる目的で使用すること。
  • 特定の候補者がこども選挙またはこどもたちから支持・評価・推薦を受けているかのような印象を与える利用。
  • 候補者インタビュー動画やこどもたちの質問・意見を、選挙運動用のウェブサイト、SNS、チラシ、ポスター、街頭演説、演説会、メール、メッセージ配信等で使用すること。
  • こどもマニフェストの一部または全部を、特定候補者の公約、政策資料、選挙公報、演説、SNS投稿等において、当該候補者への投票を促す文脈で使用すること。
  • こども選挙の投票結果、順位、得票数、感想、メッセージ等を、特定候補者の優位性や人気を示す目的で使用すること。
  • こども選挙の名称やロゴを用いて、運営団体が特定候補者を支持・推薦しているかのように表示すること。

こども選挙は、特定の候補者を応援するための取り組みではありません。
また、こどもマニフェストは、こどもたちが地域の課題を学び、自分たちの意見を表明するための教育的成果物であり、候補者の選挙活動に利用されることを目的としたものではありません。

そのため、候補者、陣営、政党、政治団体、支援者等による二次利用により、こども選挙が特定候補者を応援している、または特定候補者の選挙活動に協力しているとの誤解が生じるおそれがある場合、運営者は当該利用の中止、削除、訂正、表示の変更等を求めることがあります。

なお、報道、研究、教育、行政、地域活動等の目的でこども選挙の内容を紹介する場合であっても、特定候補者の支持・不支持や選挙運動に利用されるおそれがある場合には、事前に運営者の確認を得るものとします。

こども選挙のコンテンツは、こどもたちの学びと意見表明を守るために管理されるものであり、実際の選挙における特定候補者の利益のために利用されることは認めません。

9. 参加するこどもへのリスク対応

こども選挙では、参加するこどもたちの安全と安心を最優先にします。

選挙に関わるテーマは社会的関心が高く、時に意見の対立や誤解を招く可能性があります。そのため、こどもたちが不必要な負担や危険にさらされないよう、事前にリスクを想定し、必要な対応を行います。

9-1. 個人情報とプライバシーの保護

参加するこどもの氏名、住所、学校名、連絡先、顔写真、投票先など、個人が特定される情報は、個人情報の保護に関する法律その他関係法令を遵守し、適正に取得、管理し、本事業の運営に必要な範囲で使用します。

  • こども選挙委員など継続的に参加するこどもについては、活動内でニックネームを使用するなど、本人特定のリスクを下げます。
  • メディア掲載、写真撮影、動画撮影、SNS投稿を行う場合は、事前に保護者の同意を得ます。
  • 本人や保護者が掲載を希望しない場合は、その意思を尊重します。
  • 投票者については、投票所で不要な個人情報を取得しません。
  • ネット投票等で重複投票防止のために必要な情報を取得する場合も、目的を限定し、集計後すみやかに削除します。

9-2. 心理的安全性の確保

選挙や政治に関するテーマでは、家庭や周囲の意見と異なる考えに触れることがあります。こども選挙では、こどもたちが安心して意見を言える場づくりを重視します。

  • どの候補者に関心を持つか、どの政策を大切だと思うかについて、こどもの意見を否定しません。
  • 投票先を発表させたり、理由を無理に言わせたりしません。
  • 意見が違うことは自然なことであり、相手を攻撃せずに対話する姿勢を大切にします。
  • 政治的な対立や大人同士の議論に、こどもを巻き込まないよう配慮します。

10. 保護者への説明と同意

ワークショップに参加するこども選挙委員では、保護者への説明と同意を重視します。

参加するこどもと保護者に対し、活動の目的、内容、スケジュール、撮影・掲載の有無、個人情報の取り扱い、政治的中立性、公職選挙法上の注意点を事前に説明します。

特に、以下の点を明確に伝えます。

  • こども選挙は主権者教育であり、特定候補の応援活動ではないこと。
  • こどもが特定候補への投票を呼びかけることはしないこと。
  • 投票先を他者に伝えいないこと。
  • 写真・動画・コメント等の掲載には、事前の同意を得ること。
  • 参加しない、途中で参加をやめる、掲載を取り下げるといった意思も尊重されること。

11. 関係者・スタッフの行動規範

こども選挙に関わるスタッフ、ボランティア、講師、協力者は、こども選挙の活動としては、以下の行動規範を守ります。

  • 活動中、特定の候補者、政党、政治団体への支持・不支持を、こどもに示さない。
  • こどもに投票先を尋ねない。
  • こどもの政治的意見を外部に漏らさない。
  • 候補者情報について、個人的評価や解釈を加えて説明しない。
  • 実際の選挙・およびこども選挙の結果に影響を与えるおそれのある発信をしない。
  • 不明点や判断に迷う事案がある場合は、個人で判断せず、こども選挙の運営責任者に確認する。

12. こども選挙の意義

「こどもは有権者ではないけれど、主権者」で社会に参画する権利も認められています。

こども選挙が目指すのは、こどもたちに投票体験を提供することだけではありません。

自分のまちを知ること。
社会の仕組みに関心を持つこと。
違う意見に出会うこと。
自分の考えを持つこと。
その考えを安心して表明できること。
そして、自分も社会の一員なのだと実感すること。

こども選挙は、こどもたちの一票を実際の選挙結果に反映させるものではありません。しかし、こどもたちが地域社会について真剣に考え、意見を持ち、声を届けることは、地域の民主主義を支える大切な要素であると考えています。

私たちは、公職選挙法を遵守し、政治的中立性と公平性を確保し、こどもの安全を最優先にしながら、主権者教育としてのこども選挙を誠実に運営していきます。

策定日:2026年6月9日